部門間の壁を除去するための共通のゴール

文久2年8月21日(1862年9月14日)、薩摩藩主の父であり、薩摩藩の実権を握ってい

た島津久光の大名行列に馬で遊びに出かけていたイギリス人グループが入り込み、薩

摩藩士に切り殺される事件が発生しました。生麦事件です。

 


イギリスは、自国民が殺されたのですから殺人事件として犯人の引き渡し、損害賠償

を要求します。薩摩藩からすると、大名行列を乱したことに対する無礼討ちというこ

とで日本国内法にのっとった対応をしたにすぎない、ということになります。それが、

攘夷志士の側から見ますと、薩摩の国父様が攘夷の先駆けをしてくれた、自分たちも

遅れをとってはいけない、となります。生麦事件では、島津久光が列に入り込んだイ

ギリス人を殺せ、と命令してはいません。あくまでも列から離れろ、出ていけと薩摩

藩士が指示したにもかかわらず、言葉が通じないイギリス人が何を言われているか分

からないまま島津久光の籠にドンドン近づいていってしまい、国父様に何かあったら

大変だと思った薩摩藩士が防御のために切り殺したということです。

 


ものの見方は立場によって異なります。同じ事象でも違う立場の人が見れば、他の立場

の人とは違う解釈をします。●●製品の売上が落ちてきているという事象に対して、営

業の立場であれば、●●製品の価格競争力が落ちてきているからだと言うかもしれませ

ん。設計の立場からすれば、何のための営業部なのか、営業力を強化するように社員教

育してもらいたい、と言うかもしれません。

 


立場の違いからくる主張の違いを言い合っていても平行線状態が続きます。その状態から

脱却するためには、違う立場の目線から共通の目線で見られるようにする必要があります。

それは、共通のゴールを共有するということです。先ほどの営業と設計の例でいえば、共

通のゴールとなるのは、自分たちの会社の売上目標だったり、●●製品の売上目標となり

ます。そのゴールを達成するために、改めて何が問題となっているのか、どのような対策

を取れば良いのかを一緒になって考え、協力体制を整えることが重要となります。

どのような組織改革でもまずは共通のゴールを持つことからスタートします。

 


生麦事件の段階では、幕府、諸藩、朝廷、攘夷派、開国派、諸外国ともにまだまだそのよう

な目線合わせができていませんでした。その時代は、共通のゴールを確認するよりも互いの

主義主張を本当の戦闘の中で戦わせ、勝ち残ることでゴールを一本化していかざるを得なか

ったのかもしれません。