仕事の進め方


仕事の始まりと終わり

 仕事の始まりは、「指示・命令・依頼」から始まります。それは、上司からであったり、顧客からであったり、他部門の担当者からだったりします。相手が何らかのボールを投げ、それを受け取った状態が仕事の始まりとなります。受け取ったボールは相手に返さないといけません。ボールを返すということは「報告」をすることとなります。報告をすることで一旦始まった仕事の区切りがつけられます。そこで相手が完了したと捉えれば、仕事が終わったことになります。

 

 指示を受ける際に押さえておくべきことは、その仕事の目的とゴールは何かということです。これが曖昧なまま着手してしまいますと、何を目指して取り組むべきかがぼんやりしているため、最終ゴールまでの最短距離で進めることができなくなります。やりながら最終的に目指すべきゴールを絞り込んでいく、明確にしていくことになりますので、そのプロセスは、行ったり来たりしたものになったり、やり直しを繰り返すことになります。そこには多くのロスが出てきます。したがって、仕事を始めるにあたっては、少なくともその仕事のQCDを明確にした上で取り組むことが重要です。

 QCDとは、右図にある通りの意味です。たとえば、何らかの報告書を作成することになった場合、どんな報告書がいつまでに提出されれば良いのかを明確にしておく必要があります。Qの視点でいえば、何ページの報告書なのか、報告書に盛り込まれる項目は何と何かということになります。Cの視点では、その報告書を作成するためにはどの程度の時間を投下するのが妥当だと考えるのかということです。24時間かける報告書と12時間投下する報告書では、おのずとそのQのレベルも違ってくるはずです。Dの視点は、いつまでに提出すべきかという最終納期となります。

 これは、指示をする側も意識して指示をしておく必要があることです。指示をする立場の管理者の中には、納期のみ提示してあとは任せるから適当にまとめてみて、というような指示の出し方をする人がいます。任せると言っておきながら、実際に提出されたものを見てからあれが足りない、これが余計だ、というようなことを言い、ダメ出しをします。その挙句にやり直しとなったらさらに時間を投下しなければならなくなります。

 

 不幸にも指示の出し方が適切ではない上司の下で働かなければならない場合は、自分から上司に働きかけていく必要があります。その際のポイントが左図です。

 仕事のWQCDが曖昧であれば、質問をして明確にしておく必要があります。また、仕事の終わりの仕方についてもあらかじめ確認をしておく必要があります。報告するにしてもメールで良いのか、顔と顔を付き合わせての報告が望ましいのか、相手がどのような形式を望んでいるのかを確認し、それに合わせるように段取りをしておく必要があります。

 また、その場では相手もあまりQCDのイメージが持てていない場合もあります。その場合は、一旦自分の席に戻り、自分なりにQCDを設定し、それを相手に提示しながら相手のイメージを明確にしていくというステップを踏む必要があります。そのためにも、相手からの指示内容、要望を忘れないようにメモに取っておくことも基本的な行動となります。上司から呼ばれて筆記用具も持たずに手ぶらで「何でしょうか」とやってくる人もたまに見かけます。そのような姿勢は、上司に「こいつはちゃんと仕事の指示を受ける気がないんだな」と思わせてしまい、自分の評価を下げることになります。そのようなことのないように、上記①~④については当たり前のこととして実践できていなければなりません。管理者、上司となる人は、仕事を通して意識的にそのようなことを身に付けさせる必要があります。

 

段取りとスケジュールの設計

 仕事の目的とゴールが明確になりましたら、そのゴールに到達するための段取りを設計します。段取りとは、元々は歌舞伎の楽屋用語として使われていました。芝居の筋や構成のことを段取りと言います。このことから仕事においては、目指すべきゴール達成に向けた手順や方法を組み立てることを段取りを設計する、段取りを組むと言います。段取りを設計する際には、具体的な実施項目までが分かるレベルまで業務を細分化しておく必要があります。そのため、段取りを設計することをブレークダウンすると表現することもあります。実施項目の塊が大きすぎると具体的に何をやるのかがぼやけてしまいます。

 たとえば、住宅の営業マンがA氏から受注をもらうことをゴールとして営業活動をしている場合、最終ゴールは受注の獲得となります。そのための実施項目をブレークダウンしてみたものが、初回訪問、提案訪問、各種折衝訪問、クロージング訪問といった大きな塊だけで捉えていたらそれぞれの訪問で具体的に何をするのかが見えません。そのため、各訪問に向けて何の準備をするべきかが漠然としてしまいます。その結果、初回訪問で本来なら確認すべきこと、説明しておくべきことが抜けてしまい、後日改めて訪問するという時間のロスを発生させてしまうかもしれません。そうならないためにも、段取りを設計するに当たっては、初回訪問のゴールを設定し、そのために必要な資料は何か、分かりやすく説明するためにはどんな工夫が必要か、どのような流れで初回訪問のゴールにたどり着くかといったことを設計しておく必要があります。

 また、より具体的な実施項目をイメージできるようにするためには、ブレークダウンした一つひとつにどれだけの時間をかけるのかという見積時間を設定しておくこともポイントとなります。訪問準備といってもその準備内容によっては2時間かける場合もあれば、出来合いのものを揃えるだけの30分程度で済ます場合もあります。どの程度の時間をかけるかということは、準備レベルの基準を認識することにもつながります。

 

 段取りを設計したら、一つひとつの実施事項をいつやるのかというスケジュールに落とし込みます。特に誰かと約束をしていない場合でも、何日に何をすると望ましいのかという理想のスケジュールをとりあえず想定しておきます。その上で、相手の了解が得られるように調整をしていくというスタンスが仕事の生産性を高めることになります。すべて、相手任せ、成り行き任せで動いてしまっては、仕事に振り回されている状態に陥ることになります。

 

報告を適切におこなう重要性

 正しい「報告」があって初めて正しい「指示」ができます。いくら上司の能力が高くて良い指示が出せたとしても報告の仕方がまずく、情報が間違って伝われば、間違った判断につながることもあります。そのようなことにならないためにも適切な報告の仕方を実践する必要があります。

 

 適切に報告をするポイントは以下のとおりです。

  1. 適切なタイミングで報告する
  2. 危ないと思ったらアラームを鳴らす
  3. 指示者の要求するレベルで報告する
  4. 結論から報告する

 指示を受ける際に、どのタイミングで報告を入れるべきか、最終報告はいつかを設定しておくことが重要です。そこが曖昧のままですと、相手から「このあいだのはどうなっている?」と突然聞かれてしまうことになります。仕事をする上では、相手から常に促される人と自分から動いていく人では、後者の方が評価されます。気の利いた人となります。

 

 次に、心配なことが見えてきたらすぐにアラームを鳴らしてその内容を報告しておく必要があります。たとえそれが自分のミスによりことであっても悪いことはすぐに報告しておくことです。心配なこと、悪いことを何とか自分の力のみで対応しようとしてできるのであれば良いですが、なんともならずに最終的に上司に相談して何とかしてもらうことになるくらいならすぐに上司に相談すべきです。ギリギリになって上司に相談し、悪い結果になってしまったらそれは自分の責任となります。しかし、前もって上司にそのような状況を報告していれば、上司も対応せざるを得ないことになり、上司の責任にもなります。また、本当に結果を出したいと考えるならドンドン周りを巻き込みそれに向けて協力してもらうように働きかけることが得策です。一人で抱え込んでいても状況を悪くするだけです。

 

 3番目の指示者の要求するレベルで報告する、とはどのようなスタイルで報告するべきかをあらかじめ指示者に確認をしておき、その通りにするということです。

 

 4番目は結論から報告するということです。良い報告は、結論から報告しやすいですが、悪い報告はなかなか結論からの報告がしにくいものです。どうしても現状についてくどくどと説明をしてしまったり、そこに至る経緯を説明してしまいます。また、結論から報告しても上司は、「なぜそうなったのだ」とすぐに突っ込んできますし、それがイメージできるので突っ込まれないように状況説明から入ってしまうことが多々あります。その場合は、冒頭で「結論から言いますと、・・・」と言ってしまえば良いのです。「結論から言いますと」から報告を始めれば自然に結論からの報告となります。

 

ボールを抱え込まない

仕事を完璧に仕上げようと意識するあまり、時間をかけすぎてしまう人がいます。相手から受けたボールをいつまでも抱え込んでしまっている状態です。ボールを投げた側は、常にいつボールが返球されるのだろうかということを考えています。それを待っている時間が長くなると不安になったり、相手に対する不信感になったりします。仕事のアウトプットの質を高めることは素晴らしいことですが、そのために機を逃しては意味がありません。この場合の機を逃すとは、「相手が期待しているタイミング」を逃すということです。このタイミングは、相手によって違ってくるため、確実に押さえておきたい場合は相手に直に確認をする必要があります。確認ができなくとも、遅いよりは早いに越したことはありません。したがって、仕事をする上では、「拙速は巧遅に勝る」ということを心がけておく必要があります。拙速とは、出来は良くないが仕事が早いという意味です。逆に巧遅とは、出来は良いが仕事が遅いということです。100%の出来を目指して遅くなるよりもほどほどの出来で早い方が良いということです。ただし、いくら早い方が良いといっても雑すぎるのも問題です。だからこそ、仕事に取り掛かる前にその仕事のQCDを相手とすり合わせ、そのバランスを調整しておく必要があります。そして相手の期待しているタイミングまたはそれより前にボールを投げ返すことが重要です。たとえ、投げ返すボールの質が100%でなくとも70~80%の出来で返球しておき、最終回答期限の了解を取るような行動が求められます。