企業における人事評価制度、ルールのあり方

1905年9月2日、隋の時代(598年)から続いてきた科挙が廃止されました。身分の区別

なく、男子なら誰でも受けることができ、合格したら官僚になることができる制度が

科挙でした。しかし、その試験内容は儒教の教えであり、四書五経、古典文学からの出

題と偏ったものでした。そのため、官僚となった多くの人たちは、現実の社会問題に対

処するという思考や能力が乏しく、頭でっかちのエリートを輩出する制度となっていき

ました。産業革命がヨーロッパで起こり、近代化がものすごいスピードで進んでいく世

の中では、そのような官僚たちは様々な問題に対処することができなくなっていました。

 


科挙が始まった頃は、門閥貴族に関係なく、能力のある人を官僚として採用できるよう

にすることが目的だったものが、科挙にさえ合格すれば人生は安泰になる、という点のみ

が注目されるようになり、本来の意図とは違ったものになっていったのです。

 


なぜ、そのようなことになってしまったのか。それは当初の目的を見失った運用をし続けた

からです。能力のある人を官僚として採用する目的は何か、そもそも能力のある人とはどん

な人か、ということに各王朝の政治家や役人たちが自問自答してこなかったからです。世の

中の諸問題、市民の生活レベルの向上などに対応するのが国の役割ですが、そのための勉強

が儒教のみなのですから無駄に勉強のための勉強をすることとなり、何の役にも立ちません。

 


企業をはじめとする組織には様々なルールや制度が作られます。人事制度もそうですし、たく

さんの会議などもそうです。最初は必要だということでそのような制度や運用になったものが

いつのまにか形骸化してしまい、あまり意味のないものになっていることがあります。そうなら

ないためにも、常に現在のあり方、制度の内容、運用の方法は何を目的としてどのような成果を

得ようとしているのかを吟味し、適切なものになるように修正をかけていく必要があります。場

合によっては廃止することも必要かもしれません。

 


そのような問題意識を一人ひとりの社員が持つように育成するには、仕事を通して、何がゴールか、何のための仕事か、なぜそれが必要か、を相互に確認し合う組織風土づくりが重要となるかと思います。